いつも思い出す。
あれは、くだんかな。
くだんの何回目かの名古屋凱旋公演、2001年あたりの。
場当たりのごはん休憩、にわかに楽屋が騒がしくなって、場当たり再開でまたサーッと人がいなくなって、台所片づけて、人のいない昼下がりの七ツの2階でももちゃんとコーヒー淹れて鏡の前で飲んだ、あー始まるねーって言いながら。
なんかそれ以来、仕込み中はあの時のことを思い出すんだよね、仕込みにまつわるそれより古い記憶だっていくらもあるのに、なんでか、くだん。
別に、特段幸せな日々でも無かったはずだけど、記憶の腐食と研磨を繰り返した結果そこだけ不思議に完全な球形の記憶で(浜辺の石のようだ)、年経るごとに磨きがかかってツヤピカの、うつくしいたいせつな思い出。
いずれ今日の仕込み風景も懐かしゅう思い出すのでしょう。
未来の鏡が映し出す懐かしい過去が今現在です。
◇
ゲスト出演予定のすうどんが自作薬草茶を差し入れに持ってきはった。
「お腹が痛くなったりするかもしれない」というすりりんぐな断り付きの品だったので役者の前にとりあえずお毒味。
あれ?
薬草酒であった。
80種くらいの薬草とスパイスが入っているという、「月刊・現代農業」的なやつ。
味は甘くない養命酒というか紹興酒の新酒というか。
飲んだそばから体熱くなり、その夜は夜中に汗だくで目を覚ましました。お茶だと思ってコップ3分の1くらい飲んじゃったからね。土星酒の効能は、すごいかもしんない。