2017年11月26日日曜日

テイクツウ(光の景色)

そいでまあ、何に「はかなさ」や「うつろい」を感じるか、残したい衝動に駆られるかというのはもうほんとに人の数だけある訳で。
土門拳は「仏像は走っているんです。急いで撮りなさい!」と篠山紀信に言ったそうである、一般的には静物であるところの仏像も土門拳の目には猛スピードでうつろうものだったのだ。なぜ土門拳がそう感じるに至ったかは本人が随筆に書き残している(「走る仏像」『古寺を訪ねて―京・洛北から宇治へ』収録)。
自分の経験で言うとまさか貨物列車や戦闘機、あんな武骨でクソ頑丈な物にときめいて撮影するようになるとは思ってもなかったので、人の好みや感覚って変わるもんだなあと実感しています。TACデパーチャーのブレイクする瞬間がフィギュアスケートのペアのミラーユニゾンみたいで綺麗で完璧で胸がきゅっとするわけですよ、なんとかしてあの瞬間をそしてこの胸のきゅっを残してみたいものであるなあと思っちゃうんですよ、ハードルはすさまじく高い(TACデパーチャー撮影は戦闘機撮影の中でもかなり上級者向き&運)。

あなたを見るということはあなたの表面が再放射した光を見るということ。可視光線が視物質中の発色団を反応速度200フェムト秒のスピードで異性化して構造変化のシグナルが視神経を走り、わたしはあなたの形状を受容・感知する。光は留まらない。先へ、先へ直進する。
長い波長を反射する夕刻、610nm橙色から630nm茜色へ移るあかい街並みの光景。何もかにもが走っている、移っている。走る光を反射して、仏像もまちも駆け抜けていく。やがて太陽光を失い闇になるまで。静止しているものなどないのです。