2016年4月28日木曜日

ゆく春や

戸川昌子女史がお亡くなりですね、渋谷青い部屋というと東京サーカス出禁ってのを真っ先に思い出しますよ。ちんこ出して支配人にど叱られたらしい、戸川昌子本人は大ウケだったけど。


その後はスペース的にはラストワルツになってマルタ君が店長さんなんでしたっけ、経営的には旧青い部屋とは全然関係ないのかな、その辺はよく知らない。


 


名古屋では佳梯かこさんの訃報ありました、最近『杏仁豆腐のココロ』再演してたのにねえ、名古屋小劇場出身のお姉さまがまた消えてしまいました、役者は健康に悪いのかもしんないな。


 



 


飼い猫に枕取られて。


image.jpg


ちみたち気持ちよさそうだな。



2016年4月24日日曜日

木の芽時

薬味ラブにはたまらない、木の芽しゃぶしゃぶ開催。


image.jpg


料亭なんかですと山椒の花芽だけを使った花芽しゃぶしゃぶという弩贅沢をするそうですが、そこは庶民の贅沢で木の芽しゃぶしゃぶ。


ボウルいっぱいの山椒の芽ってだけで十分に贅沢です。


庭に山椒のある家、憧れですよね。


 



 


くだんお伊勢旅行実行委員会会議開催、何年も言うだけで実行不可能と思われていたお伊勢の旅がいよいよ実現しそうです、というか、みんな超売れっ子過ぎて予定がまったく合わないので「これで無理な奴はもう置いてく!」と実行委員長が思い切りましてそしたらなんとか意外とみんなそこそこ予定が合って、さてどうなる。


近年わしわしは楽しみにしすぎると当日だけ超発熱するという呪いにかかっているので、別にそんなに楽しみじゃないもん有給申請とかしないもん、というフリをしつつ当日を待つのです。


 


image.jpg


伊勢詣のついでに通りかかった時の麻吉旅館…右も左も手前も奥もすべて繋がったお宿です、築200年の木造6階建。外は雨で踏んだの畳でしおうめでもめるよーなもめないよーなお宿ですよ、まったく。



チャコモ

残念なハンサム、通称残介さんの調子が悪い。で、去年からずっと通院しているがなかなか完治しない。


食欲はすごくあるのでまあ気長にいくか、と思っていたら、急に食べなくなり、容貌がめっきり老けこんだので慌てて別の病院に連れていき、見たことないぶっとい注射されていったん回復、それからまたじわじわ体調崩しがち。歳も歳だし完全に元気にはならないんだろうか、これまでの暮らしぶりがわからないのでもしかしたらこれでフツーなのかもしれないし、歳とってからの環境の激変が身体に堪えてるのかもしれない、よくわからない。


 


で、ちょっとでも食べやすいごはんの方が良かろうと猫缶(ウエットフード)をあげたりして食いつきをみている、おじいちゃんおかゆ(みたいなの)ができたわよ。ペースト状だと食べやすく吐き戻しもないようで。


image.jpg


で、いろんなごはんを試していると、この猫はカリカリ(ドライフード)しか食べません、と最初に聞いていたチャコさんが「チャコもそれ食べる〜!」と言って顔を突っ込んでくる、残さんがカリカリ食べ残すとマネして「チャコもこれ食べたくな〜い」と言って食べ残す、残介さんを抱っこして寝てると抱っこ嫌いのチャコさんが「チャコも抱っこで寝る!」と言って腕の中にねじ込んでくる。


なんでもかんでもお兄ちゃんのマネをしたがる小学生女子ですかチャコさんは。


猫も2匹いるとそれぞれ性格とか序列とかあって面白いもんですね。


 


残さんは病院で診察中もおっとり静かにしてるし毎日の飲み薬もおとなしく飲んでくれるので、つい「オリコウさんだねー」とか声をかけて、他人にも「この猫はカシコイ猫でー」とか言ってしまうのですが、考えてみりゃ暴れないだの粗相しないだの薬飲むだの、ニンゲンにとって都合が良いってだけで猫の本質的なアタマのヨサとはカンケイないのですが、しかしやっぱりニンゲンの手を煩わせないのが飼い猫にとっての「賢さ」であるのか、なんかそういう人間中心主義ってたまに嫌になるのよね。


 


かわいい屋さんなんだからかわいけりゃいいよね。


image.jpg


か、かわいけりゃ。



2016年4月22日金曜日

震源、猫寝、夢

近3日間くらいの震源地マップ。


image.jpg


この一週間くらい、九州の例の群発地震以外は全部震源が海っぱたなんだな…


太平洋プレート沿いとかそういう系?


なんか落ち着かんねえ。


 



 


白い大きなおじちゃん猫に腕枕を強要されて眠りにつきます。


朝目が覚めると腕の中にちっこい丸い女の子猫がいます。


いつのまに入れ替わるんだろう。交代制なんだろうか。


 



 


夢らしいイヤな夢みる。


トイレが舞台の夢ってたまにみる。たいてい悪夢系。


 


なんか外国だか旅先だかで。


公演で来てて。出演してるらしくて衣裳来て撮影待ちしてて。


で、待ち時間のうちに生理で半端ない大出血して足もとまで血が流れて、あわわトイレトイレ、で、ここのトイレ使えないから外行かなきゃダメよ、とのことで通り向こうのホテルのロビーのトイレをオススメされて向かう、ホテルのフロント脇のドアを開けるとちょっとした床屋さんくらいの広さの個室にポツンと洋式トイレ1個、だだっ広いトイレだなあ、で、ホッとはしたものの、蛇口全開並の出血は止まらない。腰かけた洋便器から離れられなくて困っていると、広い個室内に続々とおば(あ)ちゃんたちが入ってくる、どうもこの国では個室の中でトイレの順番を待つものらしい、だからこんなに広いのか、しかし間仕切りくらい欲しいなあ、わたしが来た時はガラ空きだったのになんでこのタイミングで混みだすかなあ。順番待ちのおばちゃんたちが口ぐちに「トシだからもうガマンできないわー」とか「世界で一番美しいトイレだってテレビで紹介されてたからわざわざこのホテルまで来たのよー」とか言ってる、マラソン選手がぞろぞろ団体で入ってきて「今競技中なんで先譲ってもらっていいですか」と申し出るがおばちゃんたちに「あたしたち全員ずっと順番待ちしてるのよ」と言われて諦めてすごすごと出て行く。で、やっと次の人にトイレ譲って、お待たせしてすみません、筋腫で出血が止まらなくて、とかなんとか謝ったり弁解したりするとおばあちゃんたちが「わかるわー、あたしも若い時筋腫やったわよー」とか「1人で時間取りすぎよねえ」とか思い思いのことを言っている、


とまあそんな夢をみて汗だくになって目覚める早朝だったわけですよ。ああ疲れる。なまぐさい夢だった、シャワー浴びたい。


 


居酒屋とかで…トイレの個室が広すぎるとなんかどうにも落ち着かないんですが、それがみごとに夢に出ました。あの落ち着かなさってなんなんだろうな。



2016年4月20日水曜日

葱のお迎え

毎早朝、足がつって目覚める、夏の到来を知る。


早いよ。


あれ?夏は汗かくからナトリウム-カリウムバランスが崩れて筋肉が痙攣しやすくなるとかそんなメカニズムだった気がするんだけど、なんだい汗かかなくてもつるのかい、そう。


ふくらはぎだけじゃなくて足の裏とか太ももの内側とか変なとこつって、どこをどう伸ばしたら治まるのかわかんなくてただひたすら痛みに耐えて悶絶する目覚めですよ。根本的解決希望。


 


 


仕事終えて帰宅、階段登り切ったら一抱えもあるみごとな葱が眼前に現れる。


近所の料理屋さんの仕入れ仮置き場になっとった。


小学生低学年くらいの質量はゆうにありそうなネギ束はなかなかの迫力であった、ちょっと驚いたよ。


image.jpg



2016年4月19日火曜日

クサタヲ

昨日まで桜に気を取られていたんだかなんだか、家を出て突然、新緑に気づく今朝である。駅までの街路樹があざやかに新しく、こりゃ吾子の歯も生え初むっちゃうってもんである、byクサタヲ。

ハナミズキ咲き、ヒトツバタゴの花芽伸びる初夏である。

いきなり団子の熊本は団子先生着くやいきなり記録級の大地震、こんな時はSNSありがたく思う、自分以外の人がみんなSNSをやっていて正確で迅速な情報を呟いていてくれればいいのにな。



こちらは爽やかな空と風、はやくあちらもそうなるといいのです、はやく。


2016年4月14日木曜日

8年

えっ、あっ、2008年の春って坂本さんの木場野外ライブの1週間後にくだん花見だったのか、


そうか、たぶん花見しながら坂本ライブの話題になって「ユウゴくんほんと超頑張ったよね!」「よし、今からユウゴ呼ぼうぜ!」みたいな流れになったんだな、きっと。たぶん。たしか。


ねぎらうために新幹線で呼びつける人々。


しかもユウゴさんだけじゃなくて栗木さんも来てたのか、栗木さんはなんか別の舞台かライブでたまたま名古屋にいたんだったかな、ほか夢二さんやくろみ、トトコ、ハマジ、と、大人数てんこもり花見会だったみたい。


写真と記憶と当時の日記を照合するとそういうことのようです。


激しい春だったんだなあ。


おまけにわしわしは年度末で転職したりしてた、うん、激しい春だった。木場ライブからの桃園会と身内飲み会のあと、新幹線の始発で名古屋に帰ってラスト出勤したりした。


 


RIMG2425F.jpg


春爛漫、さくらの花びら舞う中飲みからかした春であった、


さくらふぶけば嬢も舞う。なんか違うな。


 


さまざまのこと思ひだすさくらかな、思い出ありすぎで巻き戻しと再生がおっつきませんですじゃ。


 



 


「生理で書いてる」って大島が言ったなあ、あれは春の手品師の受賞直後あたりに、木の実のカウンターで。


小説を書くのに理屈や構成じゃなくて「見えてきたもの」を書いていると言ったのだ、で、とどめに「自分の生理で書いてる」と言い、バルが「生理で書くってなんだ!おめえは経血で小説書いてるのか!」って絡んだんだった。


昔のことなんで今のおーしまがどうかは知りません、当時はそういう言い方をしていた。


女性が感覚的なものだけで物語を書いてしまうというのは男性には脅威で恐怖に感じると聞いたこともある、わしわしは若いころはすごい理屈こねてテーマだ構成だとごたいそうに考えて考えて書くほうだったので大島の「生理で書いてる」とか「見えてくる」発言は街中で唐突にシャーマンにでも会ったような衝撃だったよ。


それが今ではすっかり自分もお筆先で書く人に。ふしぎねー。


 



 


ゴーレム公演情報出ましたね。


10日を絡めてきたか。そういう日程か。うーん。



2016年4月11日月曜日

春飲み×2

金曜は、残業の後でオージャカンの面々と合流して飲みでした。


 


今年に入ってから?いえ去年くらいから?ちょくちょく、ふみちゃんと虎馬鯨と飲んでる夢を見ました、夢というかそれは単なる記憶掘り起こし、実際に経験したことを夢に見てるだけのような、それでもやっぱり夢らしい夢のような、まあ、夢なんですが。


 


で、金曜はふみちゃん仕事のため来られない筈が、夜、大須で火事があり、一帯に規制線張られ、ふみちゃんのお勤め先にも「一酸化炭素中毒の恐れがあるので営業中止してください」のお達しが来て臨時休業、結果飲みの場にふみちゃん駆けつけ参加となりました。火事は招き猫横の長屋風商店が5軒だか全焼する大火事で派手な割にはけが人はなかったそう、不幸中の幸い。


 


気分とか予感とか夢とかに振り回されるから精神のバランスを崩すのです、と、わかってはいても、夢の光景で気分が良くてなんか面白いことになる予感がするのです、具体的に何の根拠も設計もなくても、そういう気がして尻尾が勝手にぶんぶん振れてしまうので仕方ない。


何を話すわけでもなくても嬉しいんだから仕方ない。


 


そういう気分で、つい帰りがたく遅くまで飲んで、徒歩15〜20分くらいの帰り道の途中で出張中のサラリーマンのしつこいナンパに遭い、あれこれやんわり断っても食い下がられてしまいに手を握って離してくれなくなったので「まことに申し上げにくいのですが家で主人が待っておりますので」と言ってみたら速攻引いた、なんのかんのそれで30分くらい足止めを食らったので家着いたら3時半近く、家ではご主人様が2人ごはんを待ちかねていらっしゃいました。


しかし「主人が待っております」がこんな効果的だとは知らなかった、ちょっと覚えておくと便利ですよ女子の方。


 



 


翌日はくだん花見、久しぶりですね、くだん系の飲み会はわたし不参加の会もある筈なので会そのものが何年ぶりかはわかんないですけど久しぶりです。


くだんのお花見というと「そういや前ユーゴ呼んだら新幹線で来たよな!」というエピソードが、もう伝説のように何年も語られております。「今回も声かけてみますか?」「いやまた新幹線で来ちゃったら申し訳ないから止めとこう」、毎回この会話を聞くなあ。


 


で、わしわし寝不足と昨夜の飲酒の影響で尾張旭までの道のりでてきめんに車酔い、いや途中までさほどでもなかったのが、東部丘陵地帯の起伏のアップダウンで胃もあっぷだうんになりました。車酔いとか大人になってからは久しぶりです。


 


image.jpg


昨日の雨でだいぶん花も散りました、でもまだお葉見会ってほどでもない、やっぱ萼見会かな。


シーズンピークを過ぎた土曜だったので場所取りには苦労しませんでした、幸い。


暖かく風もなくいいくだん花見でしたよ、これで天野さん来てればなあ!


 


image.jpg


もちくんめしのタケノコご飯。


 


麻吉旅行も少し実現しそうな雰囲気です、今年こそ。


 


お花見会場からおぐま家への車でまた酔う、いやあれは酔うとかなんとかじゃないでしょう、いろいろあった。


夜は2001年のくだん釜山公演の記録ビデオ鑑賞、いやー2人とも若い。くだんの件って、若い芝居だねーって。


ももちゃんが泣いてた夢幕失敗ってこれかあ、これは泣く、なんか垂木がたわんでて変だったとか聞いたな。


 


伝説の作品ですよ、弥次喜多だって100ヤジだってこれが原点なのです、くだんの件、Amazonのマーケットプレイスで中古本が9800〜24800円で取引中ですよ。



2016年4月10日日曜日

年度はじめ

年度末をまたぐ週は6連勤プラス残業つき、次週は毎日残業という久しぶりの社畜ぷりでした、まあ、20時には帰れるので以前ハードだった時期に比べればずっと楽なのですがヘルペス出ました。


転属先の仕事内容が人生ではじめてやる系の業務で毎日覚えることいっぱいです、ざっくり言うと営業事務系の部署から経理系事務に移ったのです(経理部ではない)。煩雑な処理をほとんど手計算でしていたそうで、Excelで関数駆使したりマクロ組んだりしてくれる人が欲しい、ということで退職者分の人員補充にあたってわしわしにご指名が来たらしいのです。


で、まあ、さっそくあれとこれ自動化できたらお願い、と、まだ仕事の手順もちゃんとわからんうちからツール作成、ひと段落ついたかなという頃に今度は本社経理系部署から「あなたのとこの計算、ずっと小数点以下の切り上げ切り捨てが本社と違ってます」と、今さら?何年もうちはコレでやってたんですよね、それを今さら?な連絡があり、その計算用のツールは何年も前に本社から配布されたエクセルファイルらしいんだけど、ちょうどいいやあなたこれも直して、で、他人の作ったやたらめったら上長で煩雑なアレを読みとき、修正は可能ですけどどの時点で切り上げるんですか、計上科目ごとの個々の消費税を切り上げるんですか合算してから切り上げるんですか、あとこれ差額計算なんですけど切り上げてから差額出すんですかそれとも差額出してから切り上げるんですか、消費税1円2円の狂いのために頭抱えながら修正する、てか本社で今使ってるツールがあるはずなんだからそれくれよ、と思った。


それがひと段落したら前いた部署から月次報告作業はあなたじゃないとわからないからやってください依頼、なにこのモッテモテ!モッテモテ状態!でもあなた方は正社員で定時で退社でわたしは非正規(契約社員)で残業なんですね、コン畜生!


ということを、新しい仕事を覚えながら神経張り詰めて他人の金勘定しながら、片手間にやっています。


4・5・6月は働くと標報が上がって税金年金保険料が高くなるんであんまり残業も休日出勤もしたくないんだけどなあ。


 


消費税計算のズレは昔のっちもヒイヒイ言ってたような気がする、どこもそうなのかしら。一つの商品をさらに社内計上的にはいくつかの細かい品目コードに分けて計上しているので、まるっとまるめて税計算した時と1円単位でズレたりするわけです。いやーね。


自動化能力のほかに仕事の慎重さを買われての引き抜きだそうだが、どんぶり勘定が好きなわしわしに超向いてない仕事かもしんない。


 



 


昼間気を張ってるのとアレルギー薬の作用で夜めっぽう眠く、家帰って晩ごはん作って食べるともう睡魔がくる、灯り煌々とつけたままいつの間にか眠って夜中の2時頃に目覚め、突然なんかを書きたくなって思いついたフレーズを書きつけて(たいていそれがラストの一文になる)その一文を手掛かりに文章を書き出す、幻想掌編?スマホコント?分類はよくわかんないけど、「4時までにはキリつけて本寝しよう」と思いながら書くのでだいたい原稿用紙2〜4枚分くらいの短い創作(原稿用紙換算の感覚って古いのかしら)、書き上げてブログに載せて寝る。たまに日記に創作文が混じるのはたいていそういうパターンです。


真夜中の変なテンションで書いているので、後から読み返してなんだこれって思うこともあるしもっと時間かけて丁寧に書けばよかったって思うこともある、でも基本オフデサキというか自動筆記に近い半睡状態で書いてるので「時間かけてゆっくり」は今後もなさそうな。


ダブルミーニングとミスティフィカシオンに満ちた、人を喰ったような短編とか好きなんだけど自分で書くのは難しい。そらアタリマエか。


 



 


今年は早くに薬を飲みはじめたおかげか、花粉症の悩みとほぼ無縁です。ラッキー。


お守りとしてマスクはしている。



2016年4月7日木曜日

永遠の遠泳

水辺におりました。


声を聞いた気がして振り返りざまに、水に包まれたようでした。


何が変わったわけでもありません。髪の毛いっぽん濡らしません。ただ、視界が奇妙に、水の中から見上げるそれなのです。水面いちめんに光が乱反射して、飛ぶ鳥の跡には同心円状の紋が広がりました。その向こうに太陽が高く小さく輝いています。


水辺を離れても続きました。駅の雑踏に紛れこんでも、踏切から鉄路を眺めても、まだ続きました。パンタグラフが波頭を切って進みます。


家では揺らぐ電灯の下でおなかの大きな妻がうたたねをしていました。


夕飯を食べながら、なんだか今日は目が変なんだ、ずっと水の中にいるみたいなんだ、と話しました。大丈夫なの?と顔を覗き込む妻に、水中眼鏡に変えた方がいいかもしれない、とおどけました。彼女が笑うとあぶくで顔が隠れるのがもどかしく思えて強く抱きしめました。おなかの子も一緒にです。


そのときはたしかに水の中の景色と思いました。


 


次の月には娘が生まれ、すくすくと大きくなり、這い、立ち、歩き、幼稚園、小学校、中学へと進み、早いものだ、どんどん日の経つのが早くなるね、と、いいえ、本当に、どんどん速くなっているのでした、人の動きは清流の鮎のようです、速すぎて透けて見えます、そのうちにただ軌跡だけが見えるようになりました。飛行機雲のような紋のどれが妻でどれが娘だったか、ついにわからなくなってしまいました。


街に出れば、いくつもの軌跡が川の流れのように見えます。


 


どうやら、わたしは、わたしだけが、あの流れからはじき出されてしまったようなのです。


人の流れだけでなく、街が、年経て、廃れて、更地になって、建て直して、また古びていくのを目の当たりにしました。それもどんどん速くなって、やはり街も、透けるような軌跡に見えます。キラキラときらめきながら流れていくようです。


しばらく、呆然と、その流れを眺めておりました。


 


仙境というのはこんなことでしょうか。


時の流れのほとりに佇んで、こうして見渡しましても、もう何が映るということもなく…靄でできたプレパラートのようなぺらぺらと薄いものが流れに沿っていくつも、いくつも過ぎてゆくくらいで、あとは茫々と渺々とした景色です。


 


今もこうして水辺におります。



2016年4月4日月曜日

物書きと陰

面白い物を書く人には陰がある。


という説を自分で思いついたんだったか前の旦那の持論だったか思い出せないが、物書きには陰があると思う。


まあこの説も


「あの人は物書きだけど特に陰とかなくない?」「いやあの人はああ見えて心に闇を持ってるよ」とか


「あの人も物書きだけどやっぱ陰とかなくない?」「だってアイツの書くものいかにも薄っぺらくてつまんねーじゃん」とか、


「書く物の面白さ」や「陰の有無」の部分にそうとう主観の混じった判定ができてしまうのでかなり恣意的な話ではあるんだけど。


ただなんか説得力があるような気がしている。


 


で。


こないだのオージャカンの芝居が久々に自分の中でヒットで。


いろんな要素があるんでコレが決め手ってものでもないながら、一つ、虎馬鯨の陰があんなに前面に出てくるキャスティングって今までなかったんじゃないかなと思った。


子殺しのオトーサン役って光ノ姫以来約30年ずーっと井村さんが担ってきた役どころだったんだけど。


今回の方がなんかしっくりきた。闇深いな。と。


 


この件あまり追究しますと井村さんから二重に怒られそうなので軽くここらで止めておきます。


 


 



 


物書きにせよ物造りにせよ、まあ、創作する人ってのは自分の中に孤独な部屋を持ってキリキリ自分を削っていますわね。


以下、数年前のグループ展で田岡さんの創作物に合わせる予定で書いた短文。


 



 


In A Little Box


 


下弦の細い月に


みちない汐、


風のない夜。


 


なにごとも聞き漏らさない静けさの中、


砂に足取られながら


あるく背後の


 


宙色の天蓋の向こう側で


いっせいにランタンが灯されたのを知っています。


 


ことばの光です。


見渡すかぎりの輪郭をあざやかにしながら光気が満ちていきます。


 


誘蛾灯のように


 


あちらを目指さずにはいられないのでした。


意味のあかりに焼き殺されるとしても。


 


こちらはいまでも


うすい月あかりと


うすい影、


みちない汐と


よせない波。


ひそかでひそやかな海辺です。