2010年12月12日日曜日

まなざしの記録

土曜、雲多い。


昼、松坂屋美術館「アール・ヌーヴォーのポスター芸術展」へ。


先日たまたま通りかかった金券屋でチケットがたいそう安くなっていて、「このお値段なら観に行こうかしら」と購入。


ちなみにその後別の金券屋数軒を冷やかしてみたけどここは群を抜いて安かった。だって元値の1/3よ。


デッパートメントストーアにお出かけなんて久しぶり。


ミュシャの絵を観ると「あ、ひさうちみちお」と思い、エゴン・シーレと聞けば中川さんを連想する、ううん前後関係が逆だ、こっちがオリジナルだ、とわかっていても流麗なレタリングみると「資生堂」が浮かぶし。


ミュシャわりと好きなんす。ミュシャの描く女の人って腰まわりも太もももばーんと張っててあごのラインも丸っこくて意外とおばはん入ってる。そこが嫌いになれない所以だ。「おばはん入ってる」わけじゃなくてギリシャ女神像とかの肉感的イメージなんだろうけど。(スラブ美人の標準体型なのかもしれんが。)


ポスター芸術展なのんで、文字デザインとか構成がすごいかっこいいの多かったです。タイポグラフィってんですか。文字は面白いね。アール・デコの旗手カッサンドルの「北極星号」が素敵でした。


作品数は130点あって結構なボリューム。


美術館出口のミュージアムショップでは、この展覧会のために松永真をはじめ何人かの人気グラフィックデザイナーがデザインしたオリジナルグッズが販売されててこれも結構おもろかった、買わなかったけど。


画面比1:3くらいの縦長ポスターを二分割してデザインしたポストカード(上下バラ売り)とか、やるなと思いました。


サラ・ベルナールの上半身と下半身、さああなたはどちらがお好き?


 


面白かった、でも、同じアール・ヌーヴォーや昔のグラフィックデザインにしても、ガイジンのより日本人の作品の方が好きだなーとつくづく思った。中沢弘光とか杉浦非水とか、色遣いや背景の省略の仕方がしっくりくる、浮世絵的なのかもしんない。総じて省略の巧い絵がすごく好きだ。アール・デコの方が好きなのね。続けてアール・デコのポスター展もやらないかな。


 


それから桜山、田岡組&モッチーと待ち合わせて博物館。


このメンバーで美術館ツアーに行くようになったキッカケが、以前博物館であった「寺西二郎の見た昭和」展会場で偶然皆出くわしたからと聞いて笑う、だって私も寺西二郎展行ったもん。オージャを呼ぶ写真展か。


たしかあの時図録がたいへん安かったと記憶している、出品作品全収録の写真集が800円前後だったんじゃないかな、迷わず買った。平成17年11月とあります、百ヤジの後ですね。


さて本日は「名古屋タイムズの見た名古屋」展、二度目の来場。一回目のとき飛ばし見したとこをじっくり舐めるように観賞。


特に、大須、代官町、大曽根、車道、南大津、笹島等の古い地図の解読を飽きずに。昭和二十八年頃に連載された、記者様のルポ混じりの手書き地図、名古屋商店街絵図。


じっくり地図を解読すると今も残ってる店舗も載ってるし、馴染みのある場所なら今は無きあの店この店を思い出しながら探すのもまた楽し。


昭和二十八年大須、観音さんの裏手に「百老亭」「房島屋」「宮田楼」、門前町の通りに「まからんや」「ウラシマうどん」、そして七ツ寺宝蔵の前に「木の実」あり。うおうおうお。


そんで、またさらにそこに「もったいない広い空き家」とか「死んだ子犬が捨てられていた」とか、記者様の主観や取材したときたまたまでくわした些細なモノが細かに書きこまれてて、小学生の社会科の宿題並に雑多な情報でいっぱいの地図、それがすごく面白い。


シリーズで続いたところを見ると、当時の名タイ読者にもこの地図のファンが多かったのではないかしらと。


 


これはスナップ写真を見る楽しみに似ているなと思う、スタジオポートレイトの計算された記録ではなくて、その場その時を早撃ちに記録するスナップショットが写しだす生活感。街を歩く記者様のまなざしの記録。


「人間の生活をとりあげたものは、どんな写真でも報道」とスナップ撮影の名手・木村伊兵衛は言うたそうな。鍵は「生活」かのう。寺西二郎の写真にしても。


 


というわけで、今回はほとんど地図だけに焦点を絞って鑑賞して、そんでも田岡アート観賞ご一行様とほぼ同時に会場を出たので、どうやら自分はこの手のものを見るのに相当時間かかるのだなと知る、新聞切り抜きも展示されてると読み出しちゃうしな。2回見に来てちょうど満足です。で腰痛い。


 


その後、昭和な商店街・滝子で飲み。どのお店でも極めて安い昭和価格、滝子バンザイ。


2軒目、メニューにハンバーグ350円などもある食堂&居酒屋、ご店主(おじいちゃん)の「ポテトサラダ2コ出しちゃったヨ」をはじめとする可愛らしいお言葉の数々にズッキュンされる一行。


6人で和洋取り混ぜ食べ、焼酎をほぼ一升あけ、それでひとりあたま1000円ちょっとというアゴの外れるお会計でした。ミ、ミラクル。滝子マジック!


 


柏オーダー、チキンライス


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「グリンピースじゃなくて枝豆が乗ってるんですね」と言うて田岡さんに頭はたかれる、それは触れてはいけんことでしたか、これは不調法つかまつった。


でも枝豆チキンライス旨いです、紋切りな言い方で申し訳ないが懐かしい味ですわい。


お刺身盛り合わせの可愛らしい盛り付けに田岡さん「箱庭みたいな盛り」と。うん、なんでか、ジョセフ・コーネルの箱を連想した。


 


燐光群の話をしていてハイジさんがはらたいらと言えば竹下景子のことだなと、すっかり自動変換モードになりました、はらたいらさんに300点。


ワタナベさんと田岡さんが同郷なので「おまえどこ中よ?」的な会話、とかなんとか傍で寸評しながら聞いてるモッチーとわたしも同じ高校出身で「モチヅキセンパイ」なのだった、部活も一緒だったがほとんどタテの交流のない文芸部だったのでリアルに「モチヅキセンパイ」とは呼んでいないな。


 


3軒目、いろいろギモンの湧く寿司屋、なぜこの店名、なぜこんな量多い、なぜこんな安い。そして時々現れる学生たちはどこへ消えて行くのだ(2階があるのかも?)。


4軒目、ぱうぜに一瞬。瞬没。ぶくぶくと眠りに沈む。


ぱうぜ出て寒さで目覚めて坦々麺でシメて帰宅。


しかし12時台。


時間の感覚と時代の感覚が狂う一日でした、楽しかった。


またいい企画展があるといいな。