2010年3月28日日曜日

どうしても

昔から、歩きながら缶コーヒーを飲むことができない。


いちいち立ち止まって飲む。


一人ならいいんだけど、ツレがいると、そのぶん数歩遅れる。


でテケテケ小走りに追いかけることになる。


「何?なんかあった?」


「いや、歩きながら缶コーヒー飲めないんで」


「え?なんで?」


「なんでって…同時にできないんですよ。立ち止まらないと飲めない」


「えー、うそ、なんで?普通できるでしょ。おかしいよそれ」


たいした弱点ではないけど田岡さんにニヤリとされると「しまった」と思うわね。


「足元見えてないと歩けないんです」


「歩いてるときいちいち足元なんか見ないよ」


「見てるんすよ、アタシは。見えてないと歩けない」


「可笑しいよそれ。ほかにもあるんでしょ、同時にできないこと」


「ありません。歩き缶コーヒーだけ」


「いや、絶対ほかにもあるね。おっかしいの。俺なんか焼きそば食べながら運転できるよ」


「やめてください」


田岡のおいちゃんにニヤニヤされながら缶コーヒー片手に歩いた春の日であった。


ぼのぼのが「もの食べるときはどうしても目をつぶってしまう」って言ってたの思い出したよ。


そうなってしまう。


なぜでも。


どうしてでも。